こんにちは。大学生から小学生までの4人の男女の母、すみれです。
私自身、小さい頃から絵本が大好きで、母になってからは読み聞かせの時間を大切に子どもたちを育ててきました。
たくさんの絵本を読んできましたが、今回はその中でも特におすすめの一冊をご紹介します。
今は成人した長男が赤ちゃんの頃から親しみ、最初のお気に入りになった本です。
「ことばあそびうた」
谷川俊太郎 詩
瀬川 康男 絵
福音館書店 1973年
谷川俊太郎さんの詩集といっても馴染みのない方もいらっしゃるかもしれませんが
「さるさらう〜」や「いるかいるか〜」「かっぱかっぱらった〜」などは
あ、聞いたことある!
と思われる方も多いのではないでしょうか。
教科書などでもお馴染みの有名な詩がたくさん収められています。
音で楽しむ
「ことばあそびうた」の詩はひらがなで書かれています。
言葉遊びらしく同音異義語の類がたくさん使われています。
それが全部ひらがななので、最初読むのは大変かもしれません。
でも声に出してみると、リズムが出てきてとても楽しいのです。
慣れるに従ってどんどんリズムに乗ってくるようになり、聞いている子どもも一緒になってそのリズムに合わせて体を揺らし始めます。
赤ちゃんは楽しいリズムが大好きです。
言葉の意味はまだ判らなくていいのです。
我が家の子どもたちは赤ちゃんの頃「ことばあそびうた」の読み聞かせが大好きで、皆、私が読むリズムに乗って全身で楽しんでいました。
日本語の面白さ
谷川俊太郎さんの巧みな言葉遊びは日本語の楽しさを教えてくれます。
気取らない言葉でじんわり響く
使われている言葉は決して難しい言葉ではありません。
普段着の言葉です。
詩の内容も素朴です。
あははと声を出して笑うような内容でもありません。
ブツブツ呟いているような詩です。
声に出して読んでみて、挿絵とともに、なんだかじんわりと「日本語っていいな、面白いな」と感じる、そんな本です。
昔話の世界観
出版年の1973年といえば、今から約50年前、昭和の時代です。
描かれている世界は河童や狸が跋扈する昔話の世界に近いものがあります。
昭和の時代にも既に懐かしく感じたであろう、昔の日本のイメージ。
私はこのような世界観も日本文化の大切な一面として子たちに伝えていきたいと考えています。
昔風の語彙 … わからなくても平気!
「ことばあそびうた」の言葉は昭和らしい、今読むと少々古く感じる言葉がたくさん使われています。
小さい子どもにはわかりにくい言葉も使われています。
でも子どもはそんなのはお構いなしに楽しみます。何度も読んでいるうちにリズミカルに暗唱するようになります。
日本語の楽しさを存分に味わいながら知らず知らずのうちに語彙を増やしていきます。
そしていつの日か、学習する中で、音で覚えた語彙が意味と繋がった時、知識としてしっかりと定着します。
「さらさ」を知らないまま「さる」の詩を暗唱していた娘が数年後に偶然実物の更紗と出会い、頭の中で知識をリンクさせていました。
嬉しい体験です。
ユーモラスでちょっと怪しい絵
「ことばあそびうた」では見開き2ページ毎に詩がひとつづつ書かれています。
ページをめくる毎にそれぞれの詩の世界に子どもたちは引き込まれます。
文字も手書きで、全体的に手彫りの版画のようなイメージです。
古風でちょっと怪しげな雰囲気です。(決して怖くはないのでご安心を!)
シンプルで媚びない画風
「ことばあそびうた」は文字と線画が黒でくっきりと描かれ、黄、赤と緑だけで着色されています。
赤ちゃん向け絵本やグッズの多くがパステルカラーや丸く優しい造形のキャラクター物になりがちな中、黒ベースで抑えられた色調はちょっと異彩のようですが、それがいいのです。
絵の好みは人それぞれですから、子どもたちにも押し付けたりはしません。
でもなるべく子どもたちには広い視野を持たせてやりたい。
色々な絵に触れることで子どもたちの世界が広がっていきます。
瀬川康男さんの絵本はどれも素晴らしいですが、我が家の子どもたちは、皆「ことばあそびうた」の絵を一番喜んでいました。
手書き文字の親しみやすさ
文字は活字でなく手書きです。
細筆で一つ一つ書いたような優しいひらがなです。
「る」や「す」のくるりとなっている部分の絶妙なカーブが個人的にはたまりません。
個性的な字で、詩の世界観をよくあらわしています。
初めて本屋さんでこの本に出会った時、この手書き文字に魅せられて、私はこの本を購入したと言っても良いでしょう。
どこか懐かしい絵
猿、河童、狸など、登場する動物たちも、昔話の世界を思い出させます。
人物は皆和服です。
独特で怪しげな雰囲気ですが、動物たちの目は皆まんまるで愛嬌たっぷりです。
いわゆる「可愛い絵」ではないところがとても気に入っています。
装丁のすばらしさ
「ことばあそびうた」は表紙からおしまいまで、一冊まるごと昔話の世界観で出来ています。
優しい触り心地
中身は和紙に近いイメージの紙でできていて、しっかりしていながら柔らかく、版画風の絵がより引き立ちます。
我が家の本はかれこれ20年近く繰り返し読んでいるので、あちらこちら修繕していますが、ページの角は柔らかく手に馴染み、とても良い具合です。
表紙やカバーもツルツルし過ぎない作りで、ほど良い具合のツヤの素材で出来ています。
(美術展で売っている絵葉書などがツルツルの素材だった時ちょっと違うなと思ったことがある人にはわかるかしら?)
もう、あまりにも大好きで、本棚に飾っておくのにも良いと私は思っています。(かなり和のイメージではありますが。)
大きすぎない、ちょうどよいサイズ
絵本は一般に大きなものが多く、持ち運ぶのにはあまり向いていません。
「ことばあそびうた」は絵本にしては小ぶりの大きさです。
B5版より一回り小さく、大抵のカバンに入ります。
息子が1歳から2歳の頃、「ことばあそびうた」は彼の一番のお気に入りでした。
寝る前には「ことばあそびうた」を読むことが習慣になっていて、息子にとっては大切な入眠儀式のようなものでした。
帰省先や旅行先では、いつもと違う環境に赤ちゃんは興奮しがちです。
そんな時にあると心強いのが、普段通りのルーティンです。
いつもの入眠儀式があれば赤ちゃんはより安心して寝る体制に入ります。
息子と出かける際には必ず「ことばあそびうた」を荷物に入れて行きました。
大人が読んでも楽しい
赤ちゃんへの読み聞かせに最適な「ことばあそびうた」ですが、読んでいる私自身もとても楽しめました。
初めは全てひらがなの詩に戸惑い、つっかえながら読みました。
次第に谷川俊太郎さんの巧みな言葉選びに引き込まれて行きました。
何度も読むうちにだんだんと詩のリズムを体が覚えていき、体でリズムを取りながら音読することを楽しみました。
また瀬川康男さんの絵に普段の暮らしの中で忘れかけていた日本の昔話の世界観を思い出しました。
どの世代でも楽しめる
耳で聞きながら絵を眺めて楽しむ赤ちゃん。
ひらがなが読めるようになって自分で読むことに挑戦する幼児期から小学校低学年の子。
「これ実はちょっと怖くない?」なんて言いながら読む思春期の子。
ひらがなばかりで読みにくいと言いながら懐かしい絵を楽しむ祖父母。
「ことばあそびうた」はどの世代でも楽しめる絵本です。
まとめ
「ことばあそびうた」の魅力
- 聞いて楽しい(読み聞かせ)
- 読んで楽しい(ひらがなで綴られた言葉の広がりを読む)
- 見て楽しい(絵と装丁を楽しむ)
どれをとっても文句なしの一冊です。赤ちゃんからお年寄りまでどの年代の人も楽しめます。
一見地味なようですが、魅力がたくさん詰まった「ことばあそびうた」お子さんの本棚に是非一冊加えてあげてくださいね。
プレゼントにもオススメですよ。
なお、続編「ことばあそびうた また」もあリます。
「ことばあそびうた また」
谷川俊太郎 詩
瀬川 康男 絵
福音館書店 1973年
色味が若干違いますが、基本的なコンセプトは「ことばあそびうた」と同じで、我が家では交互にあるいは2冊通しで読み聞かせをしています。
「ことばあそびうた」の世界観がお好きだったら是非セットでオススメします。
世界に羽ばたく心を育てる
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